JASRACの主張を全面的に認めた名古屋高裁判決は間違っている

(参照:JASRACプレスリリース2004年3月4日分)
http://www.jasrac.or.jp/release/04/03_1.html

遅きに失した感はありますが、とにかく発言しておこうと思います。
筆者は上記のプレスリリースのみを参照しており、この判決に対してどのような議論がなされているかを関知していないことをあらかじめ断っておきます。
とにもかくにも愛知県の社交ダンス教室に「10年間の権利侵害と不法行為の代償として総額3,646万円余の支払いを命じる」という判決が下された事実と、JASRACが「意義深い」と公式にコメントしていることに疑問を呈せねばなりません。

まず、社交ダンス教室の顧客は不特定かつ多数であるから著作憲法上の「公の演奏」にあたる、という判断要旨がそもそも大間違いではないでしょうか?

「不特定かつ多数」と「特定または少数」とは、どのように選別され、区別されるのでしょう。
「違法ではない」と信じて疑わずにやっていたことが「違法である」とある日突然判断されるのはたいへんな事態です。明確な説明がほしいところです。「ダンス教室の顧客は特定かつ少数」というのはある程度の普遍性を持つ感覚ではないでしょうか。

さて、百歩譲って社交ダンス教室の音楽利用は「公の演奏」だとしましょう。
請求金額は余りにも高すぎるんじゃないでしょうか?

請求の内訳は7教室10年間。7教室すべてが10年間運営されてきたとして教室あたりで換算すると一つの教室が負担する損害賠償金額と利得返還は年間に50万円。これは法外ではないですか?
毎日毎日聴衆を相手に演奏会をするという紛れもない「公の演奏」を1年間やっていたならば理解できますが。

JASRACがミュージシャンの権利を守ることは当然のことです。音楽家に1円も入らない状態はおかしい。
それにしても録音された音楽の二次利用にはそれぞれの形態に応じた妥当な使用料が設定されるべきです。
ダンス教室の音楽利用は「公の演奏に準じる」として別の料金体系が考えられるべきではないでしょうか。

そして10年間分の支払いが命じられたという事実の衝撃。
名古屋地裁の第一審ではJASRACの請求以降の3年間の不法行為に基づく損害賠償義務のみを認めていましたが名古屋高裁では請求以前の7年間に渡る不当利得に基づく利得返還義務までプラスされています。
しかし、どうでしょう。JASRACは「ダンス教室で音楽を使うときも使用料を払いましょう」と10年前から呼びかけてきたでしょうか? ダンス教室にとっては請求されたこと自体がまったく寝耳に水の状態であったと想像できます。JASRAC側の責任もまた問われるべきではないでしょうか。JASRACの主張が全面的に認められた判決には大きな疑問が残ります。

JASRACはプレスリリースの中で「JASRACの今後の演奏権の管理業務にとって意義深い判決と言えます。」といっています。本当にそうでしょうか。つまり、この判決以後、全国のダンス教室は「よし、きちんと使用料を払おう」と考えを変えたでしょうか? 決してそうはなっていない筈です。過去数年間にも遡って数百万、数千万といった莫大な金額を支払うくらいなら何とか秘密のまま逃げ切ろうという経営判断をするでしょう。今回の名古屋高裁の判決は決してJASRACにプラスにはなりません。「やばいから黙っとこう」という姿勢が常識化され、告訴されない限りは誰も払わないという結果になるでしょう。ミュージシャンにとっても悪夢といえる事態ではないでしょうか。

ミュージシャンの権利はもちろん保護されるべきですが、だからといって理不尽な算出法から法外な賠償請求が起こるのは明らかに行き過ぎです。JASRACは「これなら気持ちよく払える」という妥当な使用料を設定するべきです。

それにしても1,500人収容の巨大ディスコ、六本木ヴェルファーレはまさに何年間も「公の演奏」をし続けています。
こちらが告訴されないで社交ダンス教室が告訴されたわけを御存知の方、教えてください。

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